高性能樹脂による振動対策 産業用資材メーカーS社 開発部

多様なルートで運ばれる繊細な荷物を輸送時の揺れから守りたい!

低温環境でも、振動から荷物を守りながら運ぶための秘策とは?

塗料・コーティング
分散・凝集・粘度 樹脂改質 耐久性・安定性

幅広い産業用資材を製造・販売するS社。制振・防音用途の製品を開発する部署に取引先である物流会社からこんな相談が入った。「振動に弱い製品の輸送方法を検討しているのだが、これまでの緩衝材での保護では対応できず困っている」
S社開発部では、顧客の依頼に応えるために、新たな輸送資材の開発を開始した。

課題

荷物を振動から守るには!?従来の素材の組み合わせだけでは不十分で…

S社開発部では、新たな輸送資材の開発にあたり、取引先である運送会社にヒアリングを行いました。

開発部が把握した取引先の要望は次のようなものでした。

「最近、精密機械や医療機器、高級果物などは特に輸送時の振動に注意する必要がある荷物の依頼が増えている。これらの輸送時には、エアクッションや緩衝材などの衝撃吸収材を使用して、表面上の不良は防げるが、振動が抑制できているわけではないので、別の方法が必要と考えているとのことでした」

さらに、取引先の話では、
「輸送の物量と頻度が増えているため、輸送方法も多様化していることから汎用的に対策ができて、さらに積載量にも影響がでない輸送資材を開発して欲しい」との依頼事項も伝えられました。

(なかなかの難題だが、何とかしたい・・・!)開発部のKさんは部内で議論することにしました。

その結果、開発部では、振動を吸収するマットを使用する方法の提案があり、Kさんたちは、振動吸収に効果のある材料を集めてマットのサンプル試作と評価を開始しました。

「まず、ゴム素材の評価から始めました。ゴムは一定の振動吸収性能を持ち、特に低い振動周波数で効果があり、コストも比較的抑えられます。しかし、耐久性と温度による特性変化が課題でした」(Kさん)

「ウレタンフォームも比較的低コストで軽く、一定の振動吸収性能を持ち、中程度の周波数域で効果が確認できました。しかし、ゴムと同様に耐久性が課題で、さらに廃棄時の問題がありました。ゲル素材は、最も振動吸収能力が高く、幅広い周波数域で効果的な振動吸収が期待できるのですが、コストがネックとなりました」(Kさん)

振動吸収効果を高めるためには、対応する振動周波数が異なる複数素材の組み合わせが有効ということがわかり、異種材料の張り合わせを検討することにしました。

Kさんたちは、複数素材を組み合わせての検討を開始しました。厚みを調節して試作を繰り返しましたが、なかなか効果と厚みのバランスが取れる組み合わせは見つかりませんでした。

さらに、取引先からは「輸送時に低温保管が必要な場合もあるので、低温でも十分効果のある輸送資材を提案してほしい」との要望が追加で出てきました。

納期が迫る中、解決法が見つからず、Kさんたち開発担当者は行き詰まりを感じていました。

課題のポイント

  • 輸送時の振動対策が求められる精密機器や医療機器、高級果物などに対応した輸送資材を開発する必要があった

  • 振動対策には、振動吸収性能が異なる素材を組み合わせることが有効だが、厚みとのバランスが取れない

  • 低温でも振動吸収特性が発揮できる材料も探索する必要がでてきた

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