高耐熱性と高靭性の両立 電子材料メーカーX社 研究開発部

高耐熱性と高靭性を両立した、車載向けデバイス用の封止剤を開発したいが…

エポキシ樹脂の欠点を克服した靱性付与剤の実力とは

塗料・コーティング
耐久性・安定性 硬化・架橋

車載向けデバイス用の封止剤について顧客からの相談が増えているX社。近年、CASEが進む中で車載ECUの搭載数が増え、そこで使用されるデバイス向け封止剤の高い信頼性が必要になっていた。新たな封止剤の開発に乗り出したが、ある問題にぶつかっていた。

課題

180℃~200℃付近の高温に耐える、耐熱性のある封止材料を作りたいが…

問題とは、封止剤に耐熱性と靱性を持たせることでした。車載向けデバイスは過酷な熱環境、振動条件下でも動作できることが求められており、それに使用される封止剤の性能はデバイスの信頼性に大きく影響するのです。

この件の担当となり、対策を急いでいた研究開発部のS氏はこう振り返ります。
「顧客からは180℃~200℃付近の耐熱性が要求されました。さらに、車載向けということで振動による剥離やクラックを防ぐため高い靱性も必要です。しかし、耐熱性と高靭性を両立させることは、なかなか困難でした」

研究開発部では、今までに取り扱っていたエポキシ樹脂をベース樹脂として、エラストマーやエンジニアリングプラスチックなどの添加剤の配合変更、エポキシ樹脂の変性を行うなどの試作を繰り返しました。しかし、目標の耐熱温度と靱性の両立は達成できません。そのうえ、粘度が高くなってしまいモールディングの際に問題が発生し、品質にバラツキが発生する場合もありました。

「取引のある樹脂メーカーや商社などにも問い合わせ、さまざまな添加剤や変性エポキシ樹脂を取り寄せて試しましたが、どれも結果はいまひとつでした。このままでは顧客の要望に応えることができません」(S氏)

この状況に、S氏たち研究開発部のメンバーは、なす術もありませんでした。

課題のポイント

  • 車載デバイス向けの封止剤の開発において、180℃~200℃の耐熱性と振動による剥離やクラックを防ぐ高い靱性が必要だった

  • 知見のあるエポキシ樹脂をベース樹脂に、添加剤の配合変更や変性を検討したが、目標の耐熱温度と靱性の両立は達成できなかった

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