抗菌・抗ウイルス剤の定着と耐久性の向上 繊維メーカーM社 研究開発部

生地の抗菌・抗ウイルス加工の耐水性を向上したい…

繰り返し洗濯しても効果が持続する抗菌・抗ウイルス加工を実現した素材とは?

塗料・コーティング
密着・接着・粘着 表面改質 耐久性・安定性

新型コロナウイルスなどの感染症が注目される中で、抗菌・抗ウイルス加工を施した製品の需要が増している。機能性繊維加工技術を開発しているM社では、抗菌・抗ウイルス加工を施した生地を開発することになった。一般的な抗菌・抗ウイルス剤を用いた生地は数回の洗濯で効果が弱まることが多いため、M社の研究開発部では効果が長期間持続する生地を開発し、他社との差別化を図ろうと考えた。

課題

従来の表面処理技術では、抗菌・抗ウイルス剤が定着しない…

抗菌・抗ウイルス分野では、耐水性が高く、長期的に安定な抗菌・抗ウイルス効果を簡便な手法で発揮する技術が開発されてきました。しかしそれらには現状、いくつかの課題があったのです。

研究開発部のH氏は、その課題について次のように話します。
「一般的な除菌法や抗菌・抗ウイルス法では、その効果が持続しないことが多いです。特に、生地を洗濯したり、水に濡れる環境では、効果が弱まってしまうことがわかっていました」(H氏)

抗菌・抗ウイルス剤を用いて繊維を加工する方法には、一般的に次のようなものがあります。一つは抗菌・抗ウイルス剤を含むコーティング剤を、生地に塗布する方法です。この方法は加工が簡便であり即効性もありますが、洗濯を繰り返すと効果が薄れてしまうというデメリットがありました。

もう一つは抗菌・抗ウイルス剤を繊維に練り込む方法です。これは洗濯などに強い反面、紡糸時に適用する必要があり、高度な技術が必要でした。

M社では、生地を後加工する表面処理技術の方がニーズにマッチすると考え、開発を進めることにしました。他社との差別化を図るため、研究開発部内で様々な表面処理技術を検討しましたが、既存の方法では銀・銅イオンや塩化ベンザルコニウムなどの抗菌・抗ウイルス剤がうまく定着しませんでした。

「生地に直接、抗菌・抗ウイルス剤を作用させるのではなく、定着させるための足場のような技術が必要であるということがわかりました」(H氏)

しかしそのための具体的なアイデアはなかなか出ず、研究開発部のメンバーは頭を抱えるしかありませんでした。

課題のポイント

  • 一般的な除菌法や抗菌・抗ウイルス法では効果が持続しないことが多い

  • 生地に加工を施しても、洗濯や水に濡れる環境で効果が弱まってしまう

  • 既存の表面処理技術では、抗菌・抗ウイルス剤の生地への定着が難しい

1 2