カーボンニュートラルを目指した粘着剤のバイオマス度向上 化学メーカーV社 研究開発部

バイオ由来原料の割合を高めた粘着剤を開発したいが…

環境配慮型粘着剤の開発に成功!カギとなった非可食バイオ由来アクリレートとは?

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各所でカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進み、V社にも植物由来原料を含む製品の問い合わせが増えてきたことから、バイオ由来原料を使用した製品のテーマ化が決定した。

課題

バイオ由来原料を高配合した試作品で、従来品と同じ性能が発揮できず…

サステナブルな社会を実現するために、多くの企業がリサイクル原料の検討や、植物由来原料の使用、環境配慮型素材の選択などの対応を加速させています。

カーボンニュートラルを達成する製品開発事例も出てきている中、V社にも「植物由来原料を使用した粘着テープ」「バイオマスマーク認定製品」に関する問い合わせが急速に増えてきました。

得意先からの要望もあり、V社でも、プロジェクトを立ち上げ「バイオ由来原料を使用した粘着テープ」の早期開発を目指すことになりました。

プロジェクトリーダーのNさんは、当時の様子をこのように振り返ります。
「環境配慮型の競合品が増えており、自社でも開発に取り組む必要性を感じていました。プロジェクトリーダーとして開発依頼を即決で引き受けました」

「まずは、プロジェクトメンバーと方針の相談をしました。当社でも、これまで何度かバイオ由来原料を使用した製品の検討は実施してきましたが、バイオ由来原料の配合割合(バイオマス度)と性能の両立がいつも課題でした」

Nさんは話を続けます。
「今回は、競合との差別化のため、バイオ由来原料の配合割合の高い製品の開発にチャレンジすることになりました。そのため、バイオ由来原料の選定がポイントという結論になりました」

「さらに以前から、製造部より現場での安全性確保のため『新しい原料の採用時は、接触しても影響の小さいものを選んでほしい』という要望にも応えたいと考えていました」

そこでNさんたちは、粘着剤に使用するアクリルポリマーにターゲットを絞り、その原料であるアクリレートモノマーの探索を行うことに。モノマーメーカーや商社に問い合わせをしたところ、いくつかのバイオ由来原料を使用したモノマーを入手することができたのです。

「早速、アクリルポリマーのモノマー組成の一部を、入手したバイオ由来モノマーに置き換えてポリマーを重合、評価をしました。一部の置き換えであれば、従来と同様の粘着物性等を維持できたものの、配合量を増やしていくと、タックや粘着力などの性能のバランスが崩れてしまいました」(Nさん)

従来から使用していたモノマーの種類を色々変えて、入手したバイオ由来モノマーとの組み合わせを試してみましたが、バイオ由来モノマーの配合割合が高いと性能とのバランスがとれないという状況が続き、いつもは冷静なチームリーダーのNさんにも次第に焦りが出てきます。

課題解決のポイント

  • バイオ由来原料の割合を高くしたアクリルポリマーの開発に取り組むことになった

  • 紹介されたバイオ由来原料を使用したモノマーを使用して検討するも、配合割合と粘着物性などの性能バランスが取れない

  • 製造現場から、新しい原料は安全性を確保したものを使用したいとの要望があった

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