基板材料との密着性 電子部材メーカーJ社 研究開発部

高速・大容量通信に対応可能な高性能プリント配線板のニーズに応えたい…

低誘電基板材料と低粗度銅箔の接着性向上が実現のカギ

エレクトロニクス
密着・接着・粘着 樹脂改質

通信や輸送機器などの電子機器メーカー向けに、プリント配線板等の製造を手掛けているJ社。5G通信や高度化する自動運転技術が進展する中、データの高速・大容量伝送に対応可能なプリント配線板への要望が増えていた。研究開発部は、新しい高性能のプリント配線板の開発を開始したが、大きな課題に悩まされていた。

課題

基板材料と銅箔の両面で開発を開始、しかし剥離しやすいという課題が…

データの高速・大容量伝送を実現するためには、高周波へ対応できる伝送損失の少ないプリント配線板が求められます。そのためには絶縁層となる基板に使用する材料の低誘電化と、導体である銅箔の表面租度の低減の2つの要素が必要でした。そこでJ社開発チームは、低誘電基板材料の探索と低租度銅箔の利用、それぞれの検討を開始しました。

開発チームリーダーだったA氏は、このときの状況をこう振り返ります。
「低誘電の基板材料は、従来のエポキシ樹脂と比較して接着性が低く、これまでの方法では銅箔との接着性が弱くなってしまうことが知られています。また低租度銅箔を使用することで、銅箔の凹凸によるアンカー効果が小さくなります。そのため、ますます基板材料との密着性が低下し、銅箔が剥離しやすくなっていました」

A氏たち開発チームでは密着性を高めるため、低誘電基板材料に有効と考えられる接着剤の使用や、低租度銅箔の表面にシランカップリング剤を塗布するなどの表面処理を試みました。その結果、確かに剥離強度の向上は見られましたが、目標とする性能に達成することはできませんでした。

低誘電基板材料と低租度銅箔との満足する接着性を実現する方法は見つからず、開発チームの中には焦りが見えはじめていました。

課題のポイント

  • 高速・大容量データ伝送には、基板材料の低誘電化と銅箔の低粗度化が必要だった

  • 従来の銅箔の表面処理も検討したが、低誘電材料と低粗度銅箔をうまく接着する方法が見つからなかった

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