抗菌・抗ウイルス剤の定着と耐久性の向上 繊維メーカーM社 研究開発部

生地の抗菌・抗ウイルス加工の耐水性を向上したい…

繰り返し洗濯しても効果が持続する抗菌・抗ウイルス加工を実現した素材とは?

塗料・コーティング
密着・接着・粘着 表面改質 耐久性・安定性

解決

解決のポイント

  • 酸化グラフェンはフィルム、繊維など基材の形状を問わずに表面吸着が可能

  • 複雑なプロセス・装置なしで、抗菌・抗ウイルス剤を繊維上に強固に定着できる

  • 水に濡れる環境でも効果を落とさず、繰り返し洗濯後の抗菌・抗ウイルスの維持が従来と比較して大幅に向上

繰り返し洗濯後の抗菌・抗ウイルスの維持が従来と比較して大幅に向上。抗菌・抗ウイルス剤の定着向上に成功

引き続き情報収集を進めていた研究開発部のメンバーは、あるとき、日本触媒が発表したプレスリリースを目に留めました。同社が開発したという「酸化グラフェン複合膜」に興味を持ち、さっそく問い合わせてみることにしました。

酸化グラフェンは、厚み約1nm、シート長は数~数十ミクロンで高いアスペクト比・高表面積を持つナノ炭素材料でした。これまでの他のナノ炭素材料(カーボンナノチューブやグラフェン)では難しかった「高い分散性」を発現していることが特徴であることがわかりました。

「フィルムや繊維など基材の形状を問わずに表面吸着が可能だったため、機能を付与する剤を定着させる足場材としての効果が期待できると思いました」(H氏)

研究開発部では日本触媒から酸化グラフェンのサンプルを提供してもらい、抗菌・抗ウイルス剤の足場材として評価してみることにしました。

その結果、酸化グラフェンは、繊維および抗菌・抗ウイルス剤双方と親和性の高い材料であり、抗菌・抗ウイルス剤を繊維上に強固に定着できました。酸化グラフェンと抗菌・抗ウイルス剤との複合化のプロセスも簡便であり、複雑なプロセス・装置は必要ありませんでした。

「水に濡れる環境でも効果を落とさず、繰り返し洗濯後の性能維持率は従来より大幅に向上しました。この結果を見て、期待はさらに高まりましたね」(H氏)

この酸化グラフェンを使用すれば、抗菌・抗ウイルス剤を生地上に定着させることができ、耐久性のある抗菌・抗ウイルス性を持つ生地を実現できると、研究開発部のメンバーは確信しました。この生地は、マスクをはじめ、寝具や衣類など、さまざまな用途への展開を予定しています。

M社では現在、酸化グラフェンを足場材として使用する技術を採用すべく、日本触媒の研究チームと相談しながら生地の開発を着実に進めています。

※「耐水性」「洗濯後の性能維持率」などの効果は、今回実験を行った基材・条件で確認されたことであり、全ての材質・環境で同様の効果が出るわけではありません

課題解決ソリューション

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