次世代型キレート剤を活用した洗剤の処方設計 洗浄剤メーカーP社 研究開発部

高アルカリ環境でも「汚れを落とす」「再付着させない」を両立させたいが…

ポリマー型キレート剤で叶える、洗浄性と仕上がりの両立とは?

環境・水処理
分散・凝集・粘度 環境対応

業務用洗剤メーカーP社の研究開発部に所属するFさん。同社は食品工場向けに、製造釜や配管洗浄などの製造ラインや、パレットやグリドルなど食品製造に用いる用具を洗浄するための高アルカリ洗剤を展開しており、現場での確かな実績を積み重ねてきました。そんな中、Fさんは主力洗剤の処方リニューアルプロジェクトを担当することになります。

※本事例は想定事例ですが、似たようなお悩みの方々へのご参考として掲載しています

課題

高アルカリ化が進むほどスケールが出る。規制と品質要求の板挟みで、洗剤検討が手詰まりに…

リニューアルの背景として原料規制の強化に加え、食品工場側の品質管理水準が高まり、より高い性能を備えた洗剤への要望が増えていました。Fさんたちは、リニューアル方針を検討するために、まず現行処方の課題を整理しました。

食品工場で扱う汚れは、乳・卵などのタンパク汚れ、油脂、調味料などが加熱調理によってこびりついた非常に手強いものばかりです。こうした汚れをしっかり落とすためには、洗剤のアルカリ度を高める必要があります。一方で、アルカリ度を高めるほど、水中のカルシウムやマグネシウムなどの硬度成分が析出しやすくなり「スケール」と呼ばれる白っぽい付着物が発生しやすくなります。

スケールは、洗浄したはずの釜やパレットの表面に白く残って仕上がりを損なうだけでなく、すすぎ設備へのスケール付着や配管詰まりといった設備トラブルも引き起こします。

「洗浄力とスケール抑制をどう両立させるか。開発者にとっては、長年向き合ってきた課題なんです」(Fさん)

この課題に対し、Caイオンなどを捕捉して洗浄性を向上させたり、スケール形成を防いだりする「キレート剤」と、汚れや不溶塩などを水中に散らして、汚れの再付着やスケール蓄積を抑制する「分散剤」の2種類を組み合わせる処方で対応してきました。ただし、洗剤の処方は配合できる成分の総量が決まっているため、とくに高アルカリ濃縮タイプでは洗浄力の要となるアルカリ剤を優先的に配合せざるを得ず、キレート剤や分散剤に割ける枠が限られてしまいます。

さらに、一部のキレート剤や分散剤は高アルカリの洗浄剤では溶解安定性が低下し、安定した処方を保つには配合量を抑える必要も出てきます。Fさんが洗浄力向上を狙って汎用のキレート剤の配合量を増やしてみたところ、配合直後は均一でも長期保管時に白濁や析出が見られ、安定性試験をクリアできない状況でした。

一方で、キレート剤や分散剤を減らしてバランスをとろうとしても、スケール抑制が不十分になってしまう傾向がありました。

加えて、規制環境の変化も大きな逆風となります。長年広く使われてきたキレート剤の代表格であるEDTAは、環境負荷低減の観点から代替が検討され始めていました。同じく代表的なキレート剤であるNTAも、安全性の観点から採用を慎重に判断するケースがみられました。

「汚れをしっかり落としたい、でもスケールは抑えたい。キレート剤は新しいものに置き換えたい、でも分散の性能は落とせない。どこから手を付けても、別の問題が顔を出す状態でした」(Fさん)

さらに見過ごせない変化として、食品工場側の管理強化がありました。工場では「前の製造ラインの汚れを次に持ち越さないこと」が一層厳しく求められるようになり、洗い残しに対する基準は年々高まっていたのです。

今まで使ってきた原料の組み合わせだけで、処方改良を実現するのは、もう限界に近いと感じていました」(Fさん)

課題のポイント

  • 食品工場で使われる業務用洗剤では、汚れを落とすためにアルカリが多く配合される一方で、スケールが発生するリスクが高まり、「しっかり落とす」と「スケールを残さない」の両立に苦慮していた

  • 高アルカリ濃縮タイプの処方では、安定性や配合設計上の制約から、キレート剤や分散剤の配合量に限界があり、スケール抑制に必要な機能を十分に確保できない場合があった

  • EDTAやNTAなど従来広く使われてきたキレート剤に、環境負荷や安全性への配慮から代替検討が進み、限られた選択肢の中で原料を置き換えていく必要に迫られていた

解決

解決のポイント

  • ポリマー型キレート剤「アクアリック®FN-001」は、キレート力と分散力を1剤で兼ね備えており、限られた配合枠の中でも「しっかり落とす」と「スケールを残さない」の両立に貢献できる

  • アクアリック®FN-001は、高アルカリ配合下でも高い溶解安定性を維持し、配合安定性を確保しながらキレートと分散の機能を発揮する

  • アクアリック®FN-001はPRTR非該当で、環境規制強化が進む中でも採用しやすく、EDTAやNTAからの原料置き換え時の有力な選択肢となる

キレート剤と分散剤の機能を兼ね備えた「ポリマー型キレート剤」という新しい選択肢

EDTAやNTAに代わるキレート剤をWEBページで調べていた中で目に留まったのが、日本触媒が開発した高機能ポリマー型キレート剤「アクアリック®FN-001」でした。

WEBページには、「キレート力・分散力を同時に実現する高機能ポリマー型キレート剤」と紹介されていました。従来のカルボン酸系ポリマーと同様に優れた分散性および再付着防止能を持ちながら、同時にCaイオンに対する高いキレート能を発揮する設計だといいます。

「ポリマー型キレート剤という言葉は初めて聞きましたし、キレートと分散の機能を1剤で備えるという考え方は、それまであまり意識したことがありませんでした。私たちが探していた方向性とよく合っているように思ったので、まずは試してみたいと思いました」(Fさん)

早速、日本触媒のHPから問い合わせをしたところ、製品担当から連絡があり、狙っていた高アルカリ領域でも効果が期待できるとの回答を得られたため、サンプル依頼をしました。

FN-001を配合した試作品で洗浄力を検証したところ、タンパク汚れの評価試験では、従来のキレート剤配合品と比較しても遜色のない洗浄力を発揮。高アルカリ配合の条件下でも、従来品と同等の洗浄力を維持できることが確認できました。

そして、Fさんたちが気にしていたスケール抑制性については、繰り返し洗浄を想定した試験や、洗浄濃度が低くスケールが発生しやすいすすぎ工程を想定した付着抑制試験でも、良好な結果でした。

「洗浄力だけなら、従来のキレート剤でも出せます。でもFN-001は、洗った後のきれいさに驚きました。繰り返し洗っても、くもりやスケールが蓄積しにくい。分散機能を併せ持つポリマー型キレート剤という説明が納得できる結果だと感じました」(Fさん)

さらに、Fさんたちを悩ませていた「高アルカリ配合での相溶性」も検証。汎用のキレート剤で苦戦していた低温保管時の析出も起こらず、高アルカリ濃縮タイプの処方設計でも、配合安定性を犠牲にすることなく必要なキレート機能や分散機能を確保できる見通しが立ちました。

加えて、FN-001は無リン・無窒素・PRTR非該当であることも決め手となりました。Fさんたちが頭を悩ませていた規制対応に向けた有力な選択肢となることが確認できたのです。

「洗浄性、スケールの付着、規制対応。私たちが抱えていた処方上の大きな課題に解決策を示してくれました。この仕上がり性の高さには大きな可能性を感じており、ホテル向けなどで仕上がり品質が重視される洗剤でもFN-001を評価したいと思いました」(Fさん)

現在Fさんたちは、アクアリック®FN-001を配合した試作品を、得意先での実地評価に向けて準備を進めています。

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