洗浄剤中の金属イオン安定化検討 化学メーカーX社 ファインケミカル研究部

洗浄剤の開発で難題。洗浄時の金属再付着抑制を求められるが・・・

他業種の技術が、解決のヒントに!メッキ薬の錯化剤として使用される添加剤とは?

エレクトロニクス
分散・凝集・粘度

化学メーカーX社で各種洗浄剤の研究開発に携わるPさん。営業担当から「半導体洗浄剤を販売する得意先から歩留まり向上のための対処法を一緒に考えてほしいと相談されている」との連絡が入った。

※本事例は想定事例ですが、似たようなお悩みの方々へのご参考として掲載しています

課題

洗浄時の基板への金属再付着を抑制することが難しく…

化学メーカーX社のファインケミカル研究部では、各種工業用洗浄剤の研究開発を行っています。Pさんが所属する部門では、半導体洗浄剤やリンス剤、エッチング剤など半導体製造工程で用いる各種薬剤の研究・開発を担当。

中堅社員のPさんは、半導体洗浄剤の処方検討と洗浄装置での評価を行う業務に携わっていました。Pさんは当時を振り返って話します。

「営業担当から『得意先から半導体の製造歩留まり改善依頼があり、具体的に相談に乗ってほしい』と連絡を受けたのが始まりでした」

「微細化が進む半導体は、デバイスの表面から様々な洗浄対象物を効果的に除去することが求められます。洗浄工程は歩留まりを左右する重要な工程であり、洗浄対象物に合わせて様々な成分を組み合わせて洗浄剤配合を設計することが求められます」(Pさん)

今回課題となったのは「洗浄中に基板から引き離し、洗浄剤に溶解した金属イオンが析出するが、基板へ再付着することを抑制させて高清浄な基板表面を再現性よく得るにはどうしたらよいか」ということでした。

基板への金属の再付着を抑制するためには、洗浄剤中での金属イオンを安定化することで解決できることがわかっています。

Pさんは、現状でも洗浄剤には、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)やEDTPO(エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸))などのキレート能を有する添加剤を使用しているものの、今回の要求レベルを達成することはできないため、新たな解決方法の模索を始めました。

いくつかの添加剤を組み合わせて洗浄剤中での金属安定化を検討したものの、良い結果が得られず、得意先からリクエストされている納期が近づいてきており・・・

課題のポイント

  • 半導体の歩留まり改善策として、洗浄時の金属再付着を抑制できないかという相談があった

  • 洗浄時の金属の再付着抑制には、洗浄剤中の金属イオンを安定化する必要があった

  • ETDAなどのキレート能を有する添加剤だけでは、要求レベルを達成することができなかった

解決

解決のポイント

  • コハク酸は金属イオンを安定化させることを目的にメッキ薬の「錯化剤」として使用実績がある

  • 日本触媒が長年にわたり製造するコハク酸は、品質・供給安定性に定評がある

  • 洗浄剤にEDTAなどのキレート剤とコハク酸を添加し評価した結果、金属イオンの析出を抑えられる可能性が見いだせた

錯化剤を調べていたPさんは、ベテラン社員から「液中の金属イオンの安定化だったら、以前、めっき薬剤の開発をしていた時に、コハク酸を検討したことがあるよ」と教えてもらいました。

早速WEBサイトで調べてみると、日本触媒のサイトに「コハク酸は金属イオンを安定化させるために、メッキ薬の「錯化剤」として使用される」という情報がありました。

Pさんは早速日本触媒の担当者に電話をして詳細の相談を行います。
「営業担当から、『日本触媒はコハク酸の原料である無水マレイン酸の生産も手掛けており、原料からの一貫生産体制のため、品質面・供給面が安定していることに定評がある』という話も聞きました」(Pさん)

工業用コハク酸のサンプルを取り寄せて、いくつかのキレート剤などと配合を試したところ、金属再付着を抑えられる可能性が出てきました。Pさんは少しだけホッとした気持ちになります。

スケールアップの準備をしながら、評価結果が良好なら同部門で検討している他の洗浄剤にも、コハク酸を提案してみようとPさんは考えています。

課題解決ソリューション