
レーザー吸収剤(イーエクスカラー®)(開発品)
可視光透明性に優れたレーザー吸収色素
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プラスチック部品の接合方法検討 化学メーカーF社 材料技術開発チーム
精密接合が可能なレーザー溶着技術と吸収剤の組み合わせがカギに!
医療用検査キット向けチップの開発・製造販売を行うF社。医療機器メーカーからF社に接着剤を使わずにチップを封止できないかとの相談が入った。
※本事例は想定事例ですが、似たようなお悩みの方々へのご参考として掲載しています
F社では透明プラスチックの成形加工技術を活かして、医療用検査キットに使用するチップの開発に取り組んでいます。
しかし得意先の医療機器メーカーから、新製品の開発にあたって、現行の接着剤による接着とは異なる他の接合方法を検討してもらえないかと相談が入ります。接着剤を使用した場合、溶出物の影響が発生する、湿度・温度による劣化からチップの保存安定性に課題がある、精密な接合が求められるが、接着剤では精度の高い接合が難しいといったような様々な課題がありました。
顧客からの相談を受けてYさんは開発チームのメンバーと方向性の議論を行います。
Yさんは顧客からの要望をメンバーに説明し、さらに、事前の調査からメンバーに溶着技術を検討することを提案します。
「溶着は樹脂の表面を熱で溶かして接合するので、接着剤のような溶出物がないし、気泡を巻き込むこともなく非常に高いシール性を確保できる。寸法精度を担保できる点もメリットだと思うので、是非、溶着技術で検討を進めたいと考えています!」
するとYさんの先輩からこのような質問が出ました。
「溶着方法としては、超音波、熱板、振動、レーザーと色々あるけど、今回求められる精密な接合には問題となる方法もあると考えますが、そのあたりの検討はどうでしょうか?」
Yさんは答えます。
「調べた範囲では、レーザー溶着だと局所加熱で高精度な位置制御も可能なため、樹脂の変形が起こらず精密な接合ができる、と考えています」
さらに説明は続きます。
「レーザーで溶着するためにはレーザーを透過する樹脂と吸収する樹脂が必要で、このあたりの選定が肝になりそうです」(Yさん)
「レーザー溶着は、接合に使用する樹脂として、レーザー照射面の上部の部材はレーザーを透過する必要があります。一方、下部の部材はこのレーザーを効率的に吸収して熱に変換する必要があります」(Yさん)
「樹脂がレーザーを吸収するためには、レーザーの光を吸収して熱に変換する添加剤(レーザー吸収剤)を樹脂に添加するか、レーザー吸収剤を含むインクを塗布、コーティングする必要があります。レーザー吸収剤としてはカーボンブラックが一般的ですが、今回は透明な用途であるので別の吸収剤を探す必要がありました」(Yさん)
レーザー吸収剤の選定には、使用するレーザー照射装置のレーザーの波長に対して、高い吸収率を持つこと、使用する樹脂や、インク・コーティング用の溶剤に均一に溶解・分散することなど、様々な特性を考える必要があり、これまでレーザー吸収剤を扱ったことのないYさんは途方に暮れてしまいます。
医療機器メーカーより接着剤を使わずに医療用検査キットのチップの封止ができないかという 相談があった
局所加熱で樹脂の変形が起こらないので、精密接合が可能なレーザー溶着で検討することになった
レーザー溶着に適合するため、レーザーを効率的に吸収して熱に変換するレーザー吸収剤を探す必要があった
日本触媒のイーエクスカラー®は、レーザーの光を効率よく熱に変換する機能に優れているため、少量添加でレーザー溶着性能が発現する
高い可視光透明性を有するため、添加量の調整によりプラスチックが持つ色味を変えずに使用することができる
Yさんはレーザー溶着技術に関するヒントを得るために、接着・接合に関する専門展示会に行き情報収集をすることにしました。
いくつかのブースを訪問する中で、日本触媒が透明材料の接合に好適なレーザー溶着技術を紹介しているのを見つけます。担当者の説明では、イーエクスカラーはレーザー吸収剤であり、少量添加でレーザーを効率的に吸収し、高い可視光の透明性を有するため、樹脂の透明性を損なわずに溶着できるとのことで、Yさんたちは興味を持ちました。
展示会場では、透明樹脂どうしを溶着したサンプルも展示されており、樹脂がきれいな透明性を維持している様子にますます期待が高まります。
後日、日本触媒と面談を行い、Yさんたちが使用している樹脂材料は日本触媒で既に溶着テストの実績があることを確認できたため、すぐにサンプルを取り寄せて試作を行いました。
Yさんはイーエクスカラーを溶剤に溶かして塗料化しコーティングを行います。最終素材と同素材の板での溶着テストは良好な結果で、最終形状を想定した評価でもレーザー溶着品は接着剤以上の接合強度を達成し、外観もプラスチックの透明性の維持が可能なものに仕上げる目途が立ちました。
次回の得意先とのミーティングで、Yさんはレーザー溶着技術とレーザー吸収剤の組合せが有効であることを説明し、新たな接合方法として提案したいと思っています。