洗浄力と環境負荷低減を両立させるキレート剤 業務用衛生用品製造Q社 開発部

洗浄剤の原材料をより環境負荷の低い物質に切り替えたいが、そう簡単には…

乳製品のガンコなカルシウム由来汚れも落とす洗浄力との両立を実現できた決め手とは?

生活関連材
分散・凝集・粘度 環境対応

飲食店やホテル、レストラン向けに業務用食器洗浄機の洗剤を製造販売しているQ社。安全性と環境に配慮した製品の普及を進める業界団体の取り組みに合わせて、自社でも製品開発の一環として、使用原料を環境負荷の低いものに置き換えることに取り組んでいた。

課題

PRTR届け出対象外のキレート剤を探索 しかし性能を合格する物質はなかなか見つからず…

ところが、いざ開発を開始すると、既存原料と同じレベルの性能を維持できそうな代替原料がなかなか見つからず、開発部メンバーは難題に直面します。
当時の状況を開発部リーダーのI氏は、こう振り返ります。

「今回の代替物質探索は、2023年4月からPRTR制度の届け出対象物質となるEDTA(エチレンジアミン四酢酸)やNTA(ニトリロ三酢酸)を対象原料として選定していました」

EDTAやNTAはキレート剤として、界面活性剤の働きを高め、高い洗浄力を維持する役割がありました。しかし、PRTR対象物質は使用に際し、その排出・移動について量を把握して国に届ける必要があり、洗剤を使用するユーザー側でもPRTR非該当の洗剤を使用して、環境に配慮していこうという動きがあるため、Q社としてもこの動きに対応していくことにしたのです。

さらに今回の開発では、性能面で他社と差別化を図るため、『洗浄力』も向上させたいと考えていました。実は従来の製品は、牛乳・バター・生クリームなど乳製品の使用頻度が高いカフェチェーン店から「洗い残しが気になる」という声をよく耳にしていたのでした。

「EDTA/NTAの代替原料として、ポリアクリル酸ナトリウムをキレート剤として洗剤の試作を行いました。しかし、特に乳製品に多く含まれるCaに対するキレート能が低く、汚れへの洗浄力は不十分でしたね」(I氏)

次にその他のポリカルボン酸系ポリマーを入手して評価してみましたが、洗浄に使用する水の硬度によって分散性が低下するポリマーがあることがわかりました。
開発を開始して数ヶ月が経過しましたが、PRTR非該当でキレート能が高く、洗浄力を高めることができる代替原料が見つかりません。
I氏たち開発部メンバーに焦りの色が見えはじめてきました。

課題のポイント

  • PRTR制度に該当するEDTAやNTAに替わるキレート剤を見つけたい

  • 乳製品に多く含まれるCa由来の汚れに対する洗浄力も高めたい

  • ポリアクリル酸ナトリウムや他のポリカルボン酸系ポリマーを試したが、洗浄力が不十分だった

解決

解決のポイント

  • 日本触媒が独自開発した「アクアリック® FN-001」は、PRTR制度に非該当のポリマー型キレート剤

  • FN-001は、EDTAと同レベルの高いCaキレート能を持つ

  • 高硬度水でも分散性機能の低下が小さい

  • 汚れの再付着防止能が高く、仕上がりがきれい

環境負荷が低く洗い上がりもキレイ!独自開発の高機能ポリマー型キレート剤の実力!

情報取集を続けていたI氏は、ちょうど開催されていた展示会で、日本触媒ブースに展示していた「アクアリックFN-001」に目が留まり、詳しい話を聞いてみました。
「アクアリックFN-001」は日本触媒が独自開発した高機能ポリマー型キレート剤で、PRTR非対象物質。EDTAと同レベルの高いCaキレート能を持ち、さらに高い分散性や汚れの再付着防止能を持つという説明でした。

FN-001に強く興味をひかれたI氏は、早速サンプルを日本触媒から取り寄せて、評価を開始しました。
「FN-001を配合した洗剤サンプルは、高い洗浄力を発揮しました。しかも、NTAの1/10程度という少量の配合でも高い効果を発揮したので、驚きました」(I氏)

さらに、硬度の高い水を使った条件下でも、他のポリマー型キレート剤のような分散性の低下が見られません。また汚れの再付着防止能が高く、洗浄後の仕上がりがきれいでした。

「私たちの評価結果では、今回の新製品に使用するキレート剤の候補としてFN-001が最有力となりました。そこで、FN-001を配合した試作洗剤を得意先に実際に使ってもらうことにしました。
その結果は、『洗浄力が上がった』『ガラス食器の洗い残しが減った』という好評価の意見が多かったです」(I氏)

こうした顧客の意見に自信を深めた開発部は、現在「アクアリック FN-001」を用いた新洗浄剤の製品化に向けて量産検討に取り組んでいます。

課題解決ソリューション