洗浄剤の環境対応 工業用化学薬品メーカーR社 開発部

環境負荷低減対応と金属への油汚れに対する洗浄力の両立が必要だが…

金属の油汚れ落ちへの効果と作業時間短縮が両立できる界面活性剤とは?

環境・水処理
分散・凝集・粘度 環境対応

工業用洗浄剤を製造・販売するR社。得意先の機械部品メーカーから潤滑油や切削油などの洗浄に使用している洗浄剤について、溶剤系洗浄剤を水系洗浄剤へ切り替えたいという内容の相談を受けた。R社は、新たな水系洗浄剤の開発にすぐに着手したが、界面活性剤の選定が難航していた。

課題

新たな界面活性剤を用いて新洗浄剤を試作、しかし油汚れが十分落ちないという課題が…

この案件を担当したR社開発部のJさんは、こう振り返ります。

「得意先に、要望をヒアリングしたところ、『今まで溶剤系洗浄剤を使っていたが、PRTR法への対応や環境負荷低減を目指して、水系洗浄剤に切り替えたい。油汚れが良く落ちて、乾燥時間が長くならない水系洗浄剤を開発してほしい』とのことでした。
そのため、新しい水系洗浄剤の開発にあたり、界面活性剤に注目して原料探索を始めましたが…そこからが本当に大変でした」(Jさん)

従来の水系洗浄剤は、溶剤系洗浄剤と比較すると、次のような課題がありました。

「まず、これまでの水系洗浄剤は、金属表面に付着した油や切削液などの汚れを落とす効果が比較的小さかったです。
さらに、洗浄後に部品表面に水滴が残存して、乾燥工程で時間がかかってしまったり、水滴が残存した跡が乾燥後に残ってしまったりするなど、部品の表面外観が不良になることもありました。
また、水系洗浄剤は、洗浄効果が温度によって大きく変わるため、適切な水温に管理する必要があり、特に自動洗浄装置による洗浄を行う場合、洗浄液の温度や性質を適切に管理することも必要でした」(Jさん)

Jさんたち開発部は、水系洗浄剤の課題を解決するために、複数の界面活性剤のサンプルを取り寄せて洗浄剤を試作して評価しましたが、金属表面に付着した潤滑油などを効果的に除去することはできませんでした。

「洗浄力の課題に加えて、洗浄後の乾燥時間の短縮も難しい状況でした。さらに、界面活性剤によっては泡立ちが多いものがあり、部品の形状によっては洗浄効果が低下したり、洗浄装置のポンプやフィルタ部品に泡が入り込んでしまい、作動が悪くなったり、場合によっては故障につながる恐れもありました」(Jさん)

開発の納期がどんどん迫る中、最適な界面活性剤が見つからず、Jさんたち開発担当者は行き詰まりを感じていました。

課題のポイント

  • 機械部品の油汚れを十分に落とせる「水系洗浄剤」を開発したい

  • 乾燥時間が長くなりやすい「水系洗浄剤」で、できるだけ乾燥時間を短縮したい

  • 自動洗浄装置への対応もでき、泡立ちも少ない洗浄剤を開発したい

解決

解決のポイント

  • 日本触媒の「ソフタノール®」なら、金属表面に浸透して付着した油成分を浮き上がらせるため、高い洗浄力を持つ

  • 「ソフタノール®」は、水に対する表面張力が低いため、表面に水滴が残りにくく、乾燥も早く、洗浄後の乾燥時間の短縮が期待できる

  • 「ソフタノール®」は低粘度でゲル化範囲が狭く、幅広い温度域での適応が可能

油汚れへの高い洗浄力をもつ「高性能な界面活性剤」が見つかり難題が解決へ!

界面活性剤の探索を続けていたJさんは、製造業の製品・技術情報を紹介するサイトで日本触媒が紹介している界面活性剤「ソフタノール」に注目しました。

「ソフタノール」は、日本触媒が独自に工業化した直鎖型の2級アルコール系ノニオン界面活性剤で、優れた液状性や浸透力を持ち、家庭用・工業用洗剤など幅広い分野で使用されているという点に興味を持ち、すぐに日本触媒に問い合わせました。

Jさんが、現状の課題を相談してみたところ、日本触媒の営業担当から、機械部品や金属加工の洗浄に適する「低泡性」のタイプがあり、金属表面に浸透して、表面に付着した油成分を浮き上がらせて高い洗浄力を発揮できる界面活性剤であるという情報を得ました。

さらに、ソフタノールは水に対する表面張力が低いため、表面に水滴が残りにくく、乾燥も早く、洗浄後の乾燥時間の短縮が期待できる点や、低粘度でゲル化範囲が狭く、幅広い温度域での適応が可能である点も確認できました。

ユニークなT字型構造を持つソフタノールは、一般的な界面活性剤よりも濡れ性が高く、金属表面に浸透しやすい特徴を持つという点にも納得感があったので、早速サンプルを取り寄せて試作を行いました。

その結果、金属表面に付着した潤滑油に対して高い洗浄力が確認でき、洗浄後に水滴が残りにくく、洗浄時の泡立ちも少ないことが確認できました。

「ソフタノールを配合した試作洗浄剤を複数の得意先で実際に使ってもらったところ、期待していたとおり、洗浄力が上がった、乾燥時間も短縮できるとのコメントでした。また、泡立ちが少なく、自動洗浄装置への適応もしやすいという好評価の意見も多かったので、これはいけると思いました」(Jさん)

R社開発部では、ソフタノールを新規水系洗浄剤向けの界面活性剤として採用することを決定し、さらに詳細な配合処方を検討するため、日本触媒とも継続して相談をしています。

課題解決ソリューション