トナー用バインダー樹脂 印刷機器メーカーT社 開発部

トナーの定着温度を下げたいが、機器へのトナー付着や保存安定性の低下が懸念され…

ガラス転移温度でガラス状態からゴム状態に急速に変化して、低温定着と保存安定性の両立が期待できるポリマー技術

塗料・コーティング
分散・凝集・粘度 耐久性・安定性

解決

解決のポイント

  • 「高粘弾性樹脂 アクリセット®VAシリーズ」は日本触媒が独自に設計したアクリル系エマルジョン樹脂で、動的弾性率を制御することができる特徴を持つ

  • 樹脂設計の自由度があり、分子量や親疎水性の調整が可能である

  • 顔料分散性に優れる

アクリセット®VAシリーズをトナーのバインダー樹脂として使用することで、低温定着に光が見えた!

さらに、Iさんたちはチームメンバーで手分けしてWEBサイトで情報収集しました。その中で日本触媒のコーポレートサイトで紹介している「高粘弾性樹脂 アクリセットVAシリーズ」を見つけました。サイトには、以下の記載がありました。

「高粘弾性樹脂 アクリセットVAシリーズ」は日本触媒が独自設計により開発した樹脂で、樹脂の動的弾性率を制御することにより応力緩和性を有します。さらに、粒子構造や分子量を調整することで親疎水性、ガラス転移温度、熱可塑性を調整することができるとのことでした。

Iさんたち開発部メンバーは、アクリセットVAシリーズの技術が、樹脂の弾性率をコントロールすることができることや、顔料分散性にもすぐれているということに強く興味をひかれ、日本触媒に連絡をして営業担当者と現状の課題について相談することにしました。

「アクリセットVAシリーズは、Tg前後でガラス状態からゴム状態に急速に変化する性質があるため、Tgをコントロールすることにより、トナー保存状態での凝集を防ぎながら、定着の低温化が期待できる。また、トナーをより平滑に定着させるためにバインダー樹脂の粘弾性をコントロールしてtanδ(損失弾性率/貯蔵弾性率)を最適化したり、室温における弾性率を大きくすることで耐久性に優れたトナーになると考えました」(Iさん)

Iさんら開発部メンバーは、バインダー樹脂としての特性を確認するため、日本触媒からアクリセットVAシリーズのサンプルを取り寄せて、トナーサンプルを試作して評価を実施しました。その結果、低温定着性の向上とトナーとしていくつかの特徴的な傾向を見出しました。

T社開発部では、アクリセットVAに大きな可能性を感じ、アクリセットVAの樹脂コンセプトで共同して開発を進めることにしました。現在は、日本触媒からトナー向けの改良サンプルを提供してもらい、製品化に向けて検討を継続しています。

課題解決ソリューション

1 2