低粘度で密着性に優れる環化重合性モノマー 印刷メーカーJ社 電子材料研究所

ディスプレイの光学特性の改善。QDインク開発担当が着目した低粘度の環化重合性モノマーとは?

QDインクの低粘度化でインクジェット吐出性向上!

エレクトロニクス
密着・接着・粘着 分散・凝集・粘度 硬化・架橋

印刷メーカーJ社の電子材料研究所に所属するBさんはディスプレイ向け機能性インクの開発担当。Bさんの元に、得意先であるディスプレイメーカー担当者から、量子ドットディスプレイ用のQD(Quantum Dot/QD)インク開発について相談したいと連絡が入った。

※本事例は想定事例ですが、似たようなお悩みの方々へのご参考として掲載しています

課題

ディスプレイの光学特性の相談。QDインクの低粘度化が課題に!

Bさんは営業担当とともに、得意先の打ち合わせに同席します。顧客から寄せられた相談は、新しいQDインクに関するものでした。

QDインクは、顧客が製造している量子ドットディスプレイで採用され、色を正確に鮮やかに発光させる機能を持ちます。得意先担当者の話によると、新製品の開発検討をしており、光学特性を向上したいとのことでした。

Bさんたちは早速研究所に戻って、チームで開発の方向性を検討します。QDインクはQD粒子をバインダー樹脂や溶媒に分散させて製造します。特に光学特性を高めるためにはQDインクを狙った箇所へ高精度にパターニングすること、すなわち、インクジェット特性を高くしてきれいに印刷できることが必要です。

そこで、インクジェット特性を向上させるため、インクの低粘度化から検討を進めることにしました。インクを低粘度化できると吐出安定性、微小液滴形成、ノズル信頼性が向上します。

Bさんたちは、QDインクに使用する重合性モノマーに着目して、特にインクジェット特性の向上が期待できる低粘度化を検討することにします。

まずは、QDインクに通常使用されるイソボルニルアクリレート(IBOA)を中心に、その他の重合性モノマーを検討しました。IBOAは、高透明で、QD粒子との相性も良くQD分散性が高い、揮発性が少なく、インクジェットの吐出性も安定するなどの特長があります。

一方で、架橋密度が低く耐溶剤性に劣る、靭性や伸びが良くない、基材との密着性があまり高くないなどのデメリットもあります。また、低粘度化という点でも限界があるとBさんは考えていました。

低粘度化という観点で、複数の単官能アクリレートを検討しましたが、インク粘度は低下するものの、硬化性が低下したり、塗膜の強度が大きく低下したり、基材との密着性が低下するなど、欠点が目立つ状況でした。また、二官能以上のアクリレートでは、一部インクの粘度の低下は見られましたが、低粘度化は不十分で、硬化収縮が大きくなることにより、高精度なパターニングを実現できず、QDインクとしての性能を発現できないリスクが高くなりました。

バランスのとれた組み合わせを見つけることができず、得意先へのサンプル提供の期間が迫るこのタイミングで、Bさんは頭を抱えてしまいました。

課題のポイント

  • 印刷メーカーJ社に得意先が新たに開発するディスプレイ向けに、QD(Quantum Dot/量子ドット)インクの開発依頼があった

  • 光学特性の向上のため、QDインクの低粘度化によるインクジェット特性の向上を検討することになった

  • イソボルニルアクリレート(IBOA)を中心に、様々な重合性モノマーの組み合わせを検討するものの、バランスのとれた組み合わせを見つけることができなかった

解決

解決のポイント

  • 低粘度で密着性に優れる環化重合性モノマー「AOMA®」を評価したところ、QDインクの低粘度化が可能になった

  • AOMA®の配合でインクジェット吐出性が改善し、基材への密着性向上により高精度な画素形成が期待できる

  • QDインクの低粘度化は吐出安定性につながるため、歩留まりが改善しコストダウンにつながる可能性がある

反応希釈剤として活用できる環化重合性モノマー「AOMA®」でQDインクの低粘度化に成功!

Bさんは、開発のヒントを探すために展示会に情報収集に訪れます。すると、日本触媒がディスプレイ用途に活用できる重合性モノマーとしてAOMAという製品を紹介していることを知りました。

ブースにて詳細を聞くと、AOMAは低粘度でインクに配合すると高い希釈性とUV硬化性を持ち、IBOAと比較してもインクの低粘度化が可能というデータを紹介されます。また、硬化物の塗膜強度が高く、耐熱性にも優れ、基材との密着性も向上するということで、Bさんは非常に魅力的なモノマーであると感じました。

日本触媒の製品担当と展示会会場にてサンプル提供依頼の相談を済ませ、AOMA評価の段取りを整えます。

「試作をしてみると、狙った通りQDインクの粘度を下げることができ、インクジェット吐出性の向上が期待できました。また、配合量を調整することにより、基材上へのドット・画素形成評価にて、基材との密着性も改善して、画素形成の安定化や不良率の低下、経時でのQD劣化の抑制も期待できました」(Bさん)

そこで、QDインクの基礎評価から、実装した状態での光学特性の画素レベル評価へと進むことにしました。今後、工程・量産適合評価を行いながら、得意先の希望納期にサンプルを提出できそうです。また、Bさんは、インクとして低粘度化が達成できたことから、歩留まり改善によるコストダウンも期待しています。

課題解決ソリューション